まずは聞きなれない専門用語である「ベント」という語句を説明します。

 

 

ベントとは、礼服の上着の裾に入れられた切れ目のことを言います。背中の
真ん中の位置に入れられたベントをセンターベント、左右両端に切れ目が
入ったものをサイドベンツと呼びます。

 

一見すると視覚的なデザインから入れられたようなこのベント、実はそれぞれ
実務的な機能を担って本来は入れられていました。センターベントは馬に
乗っても上着が邪魔にならないように、サイドベンツは剣を下げても問題なく
機能するように入れられたものなのです。

 

一方で、何も切れ目が入っていないものをノーベントと呼びます。

 

このノーベントは室内着として使用されるべく作られたもので、馬に跨ることも
剣を下げることも想定していません。すなわち、本来的にフォーマルなスーツは
すべてノーベントだったはずなのです。

 

しかし、近年、量販店などで見かける礼服はベントが切ってあるものが大半です。
これは型紙の流用などによるコストカットの現れであり、ベントによるフォーマル
とカジュアルの線引きが現在は非常に曖昧となっています。

 

 

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