たとえば知人や友人、あるいはお世話になった先人から、もう着なくなった喪服を譲ってもらうということが間々あります。
こうしたいわゆる中古の喪服を着てお通夜や告別式に参列するのは、喪主や故人に対して大変失礼なのではないかと不安に思ってしまう人も少なくないのかもしれません。
しかし、譲ってもらった中古の喪服を用いること自体に何ら問題めいたものは存在しません。
経年劣化による生地の傷みやヨレといったダメージを事前にきちんと修復してメンテナンスさえ行っておけば、葬儀当日に誰もそれを見咎めることもないでしょう。
むしろ、できる限りモノを大切に扱う日本人らしさに溢れていて、事情を知っている他の参列者からは好印象を抱いてもらえるかも知れません。
ただし、和装の場合に限っては家紋に対する注意が必要です。
男性ならば自らの家紋に、女性の場合は女紋ないし嫁ぎ先の家紋に取り換えた上で着用しなければ少々問題が生じてしまいます。
家紋とは、先祖はもとより両親・兄弟等をも表すものですから、他家の紋のままでは使用できないものと心得ておいてください。
中古の服を取り扱っているショップも増えてきていますが、稀に礼服も販売しているときがあります。
ただ、身内の礼服ならまだしも、誰のものかわからないものを身内の葬儀に着るのはどうなのかと考える方も、実際にはいるようです。
結論から言えば、まったく問題はないはずです。
なぜなら昔から、譲り受けることは頻繁に行われているからです。
着る人の気持ちの問題もあると思いますが、失礼にあたるという事は聞いたことがありません。
逆に、ものを大切にするという日本の文化において、大事に使っていくという事は、すばらしいことなのではないかと思います。
ただ礼服にも、大きくはないものの時代とともに変わってくる「流行り」があります。
ダブルの礼服などは、現在ご年配の方しか見ることが少なくなっています。
「この礼服は高いもの」といわれても、着なければ意味がありません。
中古を購入する場合も、妥協はせずに、しっかりと自分に合ったものを見つけるようにしましょう。